よくある話しではあるのです。……が。
今まで僕の上を通り過ぎて行った様々な事件たち。
その中でも、まぁまぁ記憶に残っている「自分のデザインを真似する依頼」が来ちゃった事件について書いてみようかしらと。
デザイナーあるあるだったりするかもしれないですが、時折あるやり取り。
★代理店担当さん「あの〜。このチラシっぽいデザイン、真似して作れますか?」
↓
★デザイナー「いいですけど、さすがに丸パクりは無しですよ?方向性ですよね?」
↓
★代理店担当さん「いや〜。クライアントが“このデザインで”って言ってたので。」
↓
★デザイナー「ちょっと、クライアントと直接話しますわ……。」
何度もあります。
「同じの作ってよ」系依頼。
さらに時折「見本と同じの作ってもらうだけだから、安くできるでしょ?」がセットになったりね。
で、とうとうこんな依頼が。
ある日の午後。
懇意にさせていただいている広告代理店の某担当氏が、新規案件の相談にやって来ます。
「じゃあ、お茶持ってくるんで座って待ってて〜」なんつって、いつも通りに対応を。
担当氏も慣れたもので、いつもの席に座りつつお茶待ちの間に資料を一通り広げて待ち構えます。
そして、いつもの如くいつものテンションで始まる打ち合わせ。
担当氏「実は、お客さんからこれと同じ物をと言われまして……。」
「ああ、またなのね」と担当氏が取り出す“参考資料”をのぞき込みます。
テーブルに出された参考資料のパンフレット。
見覚えがある。あるっていうか……。
かもねぎ「これ?」
担当氏「こっそり、同じデザインで作れます??」
かもねぎ「作れます?もなにも……。」
目の前に出されたのは、以前僕がデザインを担当したパンフレット。
そう、自分のデザインのパクり依頼が、自分の所に回ってきたのです。
この件のオチは、たいしたこと無いんです。
結局、最終的には「こういう方向のデザインを新規で作るって事でいいですね?」と、再度クライアントさんと打ち合わせをさせていただいたり。
そう苦労せずに納得してもらえたので、その後さらに面白い展開とかは無かったです。
全く別クライアントの案件でありましたし、さすがに自分で作ったデザインを余所に流用しておいて「偶然似ちゃったね〜」なんて言えないですしね。
偶然似ちゃったね論。
ていうか「偶然似ちゃったね〜」は出来るだけ避けるようにしてますよ?もちろん。
とは言え限界ありますけど。
ほんと、偶然ってあるし。
そもそも広告デザインの世界には「その業界っぽさ」とかあるんでね。
斬新なデザインで、しかも一目で説得力があるなら最高。
でも、チラ見しかされない広告デザインって、やっぱり「それっぽさを利用する」ってのもあるじゃないですか。
例えば、ぱっと見で物件写真に青空なビジュアルどーん!で「あ、不動産広告か〜。どれどれ〜?」っていう心理的導線。
広告デザインって、そういうのものすごい使う。
「まず大声で言いたいことを言う!」っていうやつ。
さらに例えば、北海道のお寿司屋さんが東京のイベントに出店すると仮定して。
その時に、チラシ配るとしましょうか。
北海道の大自然と、魚の新鮮さアピールのための市場のビジュアルとかを前面に出しても、何屋さんが何を言いたいのか、イマイチぼやけるですよね。
やるなら定番だけれど、寿司職人さんのビジュアルをメインにして、後は背景にお好きな北海道の大自然とか市場とか使えば良い。
少なくとも1秒で「お寿司屋さんのチラシだ!」って分かる。
そういう「この業界なら、この形よね!」っていうのは、積み重ねてきた刷り込みなので使えるならば使えば良いと思うのです。
ただ、逆に僕たちデザイナー側が気をつけなきゃいけないのは「それっぽさ」だけを使ってしまって「偶然似ちゃった」を何度も繰り返しちゃうところかな〜?
さじ加減のお話しなんですよね。
噛み砕いて言っちゃえば。
パクりデザイン依頼って、結構こんな感じだったりも。
閑話休題。
そういう意味で、クライアントさん側からも、自分なりに好きなデザインや作って欲しいデザインの方向性を持ち込んでもらうっていうのは大いに有り。
打ち合わせ早いですもんね!その方が。
あと、毎度そういう「パクり依頼」をしてくるクライアントさんと話しをさせていただくと、その手のクライアントさんって、上司と現場担当者の間に会話が無い……。
僕らは基本的には(どうしても話しが通じない場合はちょっと別)、現場の担当者さんと打ち合わせをしてお仕事をします。
で、「パクってください」って言ってくる現場担当者さんは、大抵「でも上司命令でして……。」って言ってくるんです。
「現場の私には、上司の意見を曲げる権限がありません」つって。
でもほら、ホントにパクれないじゃん?
んで、お話しが進まなくなると僕らに残された道は2つ。
- 丸パクりのデザイン案を出しつつ、ちゃんと「方向性だけ汲んだデザイン」案も同時に出す。
- 「とりあえず上司だせや」という事を(オブラートに包んで)言う。
大抵のオチはこんな感じに。
上司は「こういう(雰囲気)の作ってもらおう!」って言ったつもりでいて、部下は素直に「こういうのですね!依頼してきます!」っていう、クライアント内部での行き違い。
でも、結局は「方向性は汲む」まではします。
やっぱりさじ加減を間違えちゃ危ないだわ〜っていうだけのお話しですよね。